か~こ, 絵本のレビュー

「きんぎょが にげた」と“処理速度”にかかわるコミュニケーション

五味太郎:さく
福音館書店:出版
おすすめ年齢:1~3歳

はじめに

言わずと知れた名作です。
本屋さんでもよく目にする表紙ですね。
この五味太郎さんが描いた絵本って、1~3歳くらいの低年齢のこどもが読む絵本が多くて、うちの娘(これを書いている時点で1歳8か月)もよくお世話になっています。
ただ、低年齢のこども向けの絵本って、やっぱり過酷な運命ですよね。

うちにある「きんぎょが にげた」なんですが、乱暴に扱うからページがくしゃくしゃです。
というか、ほとんどの絵本がそうなっちゃいますよね。

「きんぎょが にげた」のおすすめポイント

さて、この「きんぎょが にげた」ですが、タイトル通り、金魚が逃げるお話です。
初版が1977年ということで、これって「およげたいやきくん」を連想します。
魚が逃げ出すストーリーが流行っていたんですかね?
主人公は画像にあるピンクの金魚なのか、それを探して追いかける読者なのかわかりません。
低年齢向けの絵本らしく、その辺が曖昧なのがとてもいいです。

内容としては、飼っていた金魚が逃げ出して、家の中のさまざまなところに隠れているのを、読者が探すタイプのものです。
幼いこどもが読むということがあってか、いわゆる起承転結のようなしっかしした枠組みはありません。
ただ、金魚が隠れる場所がだんだんたくみになっていって、しっかり探さないと見つかりません。
これ、ひと昔まえに流行した「ウォーリーをさがせ」と同じカテゴリーですね。

うちの娘は、ページをめくるとすぐに「いた!」と言って金魚を見つけ出し(といってももう場所を覚えているわけですが)、おおはしゃぎしています。
読み聞かせる保護者とこどものコミュニケーションにはもってこいの絵本ですね。
ページをめくると、なにかを競うように「いた!」と絶叫します。

こどもの発達の観点でいうと、これは『処理速度』という知的能力に関係していると思います。
少し専門的な話になってしまうのですが、『処理速度』っていうのは、簡単にいうと『視覚情報を素早く処理する能力』のことですね。
つまり、見たものを素早く書き写す、見たものを短時間しっかり記憶しておく、形と形を素早く見分ける、そして、たくさんある中から目的のものを素早く見つけ出す、などの能力の総称です。
この「きんぎょが にげた」を介した、私と娘のやりとりは、もちろん『たくさなる中から目的のものを素早く見つけ出す』能力に関係しているでしょう。
このためには、視覚走査といって、眼球を動かして視界をたどるスムーズさといいますか、そんな感じの能力が要求されます。
なにも、こどもの発達促進のためだけに絵本を読み聞かせることはないでしょうが、そういう能力にもちょこっと関係しているんだよ~くらいに覚えておいていただけるとよいかもしれません。

まとめ

「きんぎょが にげた」をご紹介しました。
この絵本は、知的側面の中でも、『処理速度』という面の発達を、楽しみながら促すことができると思います。

「きんぎょが にげた」では、単独で飼育されていた金魚が逃げ出し、最後はたくさんの金魚が泳ぐ水槽に仲間入りしたページで終わります。
なんだかハートウォーミングですね。
すみません、なんとなく起承転結がある絵本でした。
その辺も含めて、小さいお子さんにおすすめです。