た~と, 絵本のレビュー

叱ることと、しつけと、「だめよ、デイビッド!」

デイビッド・シャノン:さく
小川仁央:やく
評論社:発行
おすすめ年齢:3歳~

はじめに

アメリカの絵本が日本語訳された絵本ですね。
作者のデイビッド・シャノンという人は、アメリカの絵本作家さんとのことですが、高名な「ニューヨーク・タイムズ」「タイム」にもイラストを描いている有名な方のようです。
また、この絵本はシリーズ化されているようで、本作の他にも「デイビッド がっこうへいく」「デイビッドがやっちゃった!」があるとのことです。
そして後者に関しては、そのタイトルから本作と同様に、デイビッドが叱られ倒す予感がこれでもかってくらい伝わってきます。

「だめよ、デイビッド!」のストーリーとおすすめポイント

例によって、ストーリーと認識できるようなかっちりした起承転結はありません。
内容としては、デイビッドが家の中において数々のいたずらをし、それを叱る母親のセリフが、この絵本の文章部分?となっています。
タイトル通りに、「だめよ、デイビッド!」という感じの叱られ方を、ほぼすべてのページでしていくわけです。

そしてこの絵本、はっきりいって、こどもに読み聞かせるというよりも、読み手である親側の心にグッとくるものがあり、そのための絵本なんじゃないか、と思えるところがあります。

前述のように、本作では、デイビッドは全編を通して叱られ倒します。
表紙でやっているように、金魚鉢を傾けるなんて言う行為は、そりゃあ叱られるだろうな、とは思います。
しかし中には、ごっこ遊びをするデイビッドに対して「ふざけないの!」という驚愕のセリフでもって叱るページも存在します。
「ふざけないの!」て。
いや、ふざけたって…いいんじゃないですかね…こどもなんだし…。
と、吃驚してしまいますが、これは最後のページへの伏線なんですよね。

少し脱線しますが、私、こどもの頃に自転車で坂道を勢いよく下っていて、その途中でブレーキワイヤーが切れたことがあったんですよね。
ビンッ!!で弾けるように。マンガみたいなんですが。
それでも、こどもながらに、本能的に、ダメージを最小にするような転び方をしたんだと思います。
それでもやっぱり血が出ますし、痛いですよね。
ちょうどそこに、中年くらいの男女カップル(夫婦?)がいて、その女性が私のことを助けようと近づいてきたんですよね。
私も、(ああ、助けてもらえる)って感じで、泣きはしませんでしたが、ほっとしたと思います。
よく覚えていませんが。
そしたらですよ、男性の方が、どういうことなのかいまだに理解に苦しみますが、助けようとした女性に向かって「甘やかすな!!」って絶叫したんですよ。
そこははっきり覚えていますし、いま考えても意味がわからないです。
いや、そこは甘やかせよ、としか思えません。
「ふざけないの!」というところを読んで、なんとなくその時のことを思い出しました。

かなり脱線しましたが、戻ります。
叱られ過ぎて、もはや自尊心のかけらも残されていないのでは…と心配したくなるデイビッドですが、最後のページでは「だいすきよ」と母親から抱きしめられます。
どんなに叱っても、しっかりフォローしてあげて、愛を注いであげてね、という作者からのメッセージですよね。
この終わり方でなければデイビッドの自尊心が救われなかった、本当によかった、と思えるほどの感動的な終わり方です。

いえ、正直に書きますと、私個人は(そんなに叱らなくていいんじゃないか)という感想を抱きました。

この絵本、読んでいて、読み手である親が『グッとくる』と書きましたが、それはこの終わり方もそうなんですが、全編を通してそんな感じです。
私は、息子に「ふざけないの!」という叱り方をした記憶はありませんが、恥ずかしながらその他の叱り方はたいていしていたように思います。
絵本を通して、デイビッドを叱る母親のセリフを読んでいくと、その理不尽さを客観的にみることができて、嫌でも自分を省みることになります。
今までに1度たりとも感情的にこどもを叱ったことがない、という方はそんなこと思わないんでしょうが、そんな人いないんじゃないですかね。

この「だめよ、デイビッド!」は、読み聞かせていると、こどもはなんとなく笑うと思います。
しかし、叱られ過ぎたデイビッドがもう部屋に戻るように指示されるページがあって、そのページのデイビッドは憎しみのような表情になっていて、読み手である親は胸が締め付けられます。
親とこどもとのコミュニケーションや、しつけること、叱ることについて、改めて振り返ってみるのに、この絵本は適しているかもしれません。

まとめ

「だめよ、デイビッド!」をご紹介しました。
ぜひ、この絵本をこどもさんと一緒に読んで、笑ってください。
親が感情的に叱るということがダメだっていうこと、それはしつけとは違うこと、ほとんどの親御さんが知っているそのことを、再確認してください。
そして、最後は絵本のデイビッドのように、恥ずかしがらずにこどもさんを抱きしめてあげてください。
こどもが照れて嫌がってもお構いなしに愛情を注いであげてください。