ま~も, 絵本のレビュー

他者視点の理解に深くかかわる「まどから おくりもの」

五味太郎:作・絵
偕成社:発行
おすすめ年齢:3~5歳

はじめに

五味太郎さんの仕かけ絵本です。
ただ、仕かけのレベルが、『くだものさん やさいさん』『はらぺこ あおむし』に比べて高く、1歳くらいのこどもさんでは、正直なんのことやらわからないかもしれません。
うちの娘がこれを読んできょとんとしていたからですが。

表紙から最後のページまで、絵といいますか、イラストがとてもかわいらしいです。
また、クリスマスにサンタクロースが各家庭にプレゼントを配るという内容で、正直ワクワクします。
いくつになってもこのイベント、いいですね。
プレゼントの希望をサンタクロースに伝えたにもかかわらず、親から数日かけて、最初の希望とは違うアイテムを欲しがるように誘導されたのを、昨日のことのように思い出します。

「まどから おくりもの」のおすすめポイント

さて、この絵本の具体的な仕かけですが、どのページも窓のところがくり抜かれていて、次のページがチラッと見えるようになっています。
そして、次のページをめくって部屋の中を見ると、最初のページで窓から見えていたものとは違うものが見えます。
このあたり、説明が非常に難しいですし、何が見えるかを全ページ説明すると、完全なネタバレになってしまいますので、実際に手に取って読んでいただきたいと思います。
どのページも、窓の外からの視点と、実際の部屋の中にいい感じのギャップがあって、素敵な感じです。

ただ、この絵本の仕かけを完全に理解するには、やはりこどもさんがある程度の年齢になっている必要があるように思います。
うちの娘が現在1歳なんですが、ちょっと理解するのには早かったみたいですね。
冒頭で書いたように、ページをめくって“オチ”を見せてもきょとんとしているだけです。
というか、まだあまりこの絵本を読んでほしがりません。
イラストとかすっごくかわいくて素敵なのに。

そしてこの絵本、重要なのは、『窓の外から部屋の中を見るサンタクロースの視点』と、『部屋の中で眠っている動物たちの視点(読者の視点)』という、2つの違いの理解を求められるところです。
この切り替え、けっこうレベルが高いというか、『ある程度の年齢になっている必要がある』とは、このことです。

幼いこどもって、“自分以外の他者にも自分と同じように感情があって、その他者の視点から自分をどう見ているのか”っていうことを、まだ理解できないんですよね。
そしてこれは、よく自閉症のこどもさんが理解できないところだっていわれています。
もちろん、ここの理解がある程度の年齢になってもできないと、それがイコール自閉症スペクトラム…ということではないのですが、重要な観点であることには間違いありません。
心理学の世界では、『心の理論』なんていわれる概念です。
ただ、自閉症スペクトラムに含まれるおこさんであっても、通常発達(という表現が適切かはわかりませんが)のおこさんとは違った脳の部位を使うことで、ある程度の年齢になると『心の理論』を獲得するといわれています。
ということは、日常生活や、他者とのかかわりを通して獲得に至るということでしょうから、このような絵本で、いろいろな視点から登場人物の視点に立ち、気持ちを想像していみるのは、悪いことではなさそうです。
そういえば、自閉症スペクトラム障害って、『想像の障害』というところに極まるんですよね。
『心の理論』のチェックには、よく『サリーとアンの課題』なんていうものが使われるんですが、これについては『きもち』で書いていますのでご参照ください。

参考までに、心の理論について書かれたページも載せておきますね(https://ja.wikipedia.org/wiki/心の理論

まとめ

「まどから おくりもの」をご紹介しました。
他者視点の理解や、視点の切り替えの理解が育ったところで、この絵本の本当の意図を理解できると予想されます。
そして、この絵本に触れることを通して、上記の部分の発達を促すことが期待できそうです。
2歳、できれば3歳以上のこどもさんにおすすめですね。