バーナデッド:絵
カレン・クリステンセン:文
八木田宣子:訳
西村書店:発行
おすすめ年齢:3歳以上
はじめに
外国の方たちが描いた絵本を、日本の方が訳されたものですね。
タイトル通りに、レイチェルという女の子と、バラのお話です。
そして、絵はそれなりにリアルに描かれており、抽象的なところや、イメージを具現化したようなところがありません。
ある程度の年齢以上のこどもさん向けの内容だとわかります。
というか、1~2歳のこどもさんでは、内容がよく理解できないかもしれません。
「レイチェルのバラ」のストーリーとおすすめポイント
物語としては、わりとしっかり起承転結があります。
簡単にいうと、おばあちゃんからもらったバラが枯れてしまい、代わりにお母さんとバラの苗木を買って植え、それを世話して開花させるというものです。
なんだかこうして要約すると3行とかになってしまうわけですが、絵本の内容は実に示唆に富むものです。
まず、レイチェルは最初、おばあちゃんからバラをもらうという、『与えられるだけの存在』として描かれています。
まぁ、小さいこどもはみんなそうだと思うんですけどね。
しかし、形あるものには終わりがあると知り、レイチェルは泣きながらもバラが枯れたという事実を受け入れることになります。
このあたりが、1~2歳のこどもさんではまだ理解が難しいところかもしれません。
そして、おばあちゃんからお母さんが教えてもらったお店に、新しい苗木を買いに行き、それを育てることになるわけです。
ここからのレイチェルは、『自分の力で能動的にアクションを起こす存在』になっていくんですが、そのきっかけというか、サポートをおばあちゃんとお母さんとでするところが、なんとも味わい深いですね。
実際に、バラを育てたことがある方はおわかりでしょうが、バラをちゃんと開花させるのは非常に難しいです。
ですが、この絵本は、“途中経過をすっ飛ばしてバラが開花する”というファンタジーではなく、ちゃんと世話する過程をしっかり描いています。
秋にしっかり下地を作り、厳しい寒さの冬にも苗木を見守り、やがて春になる。
四季を通して、レイチェルとバラが一緒に成長していくわけです。
この過程で描かれているのは、『死と再生』という元型です。
ユング(トップページにいる丸いアイコンのおじいさん)は、この世のあらゆる事象には、古今東西『元型』という、パターンというか“型”があって、それが人間関係など、さまざまなところに現れる、と考えていました。
よく知られた元型としては、グレートマザーや、老賢人、トリックスターなどがありますが、それぞれについてこの記事で説明するのは不可能ですので、また別の記事にでも少しずつ書いていければ、と思っています。
ちなみにユングは、精神を病んでしまった人の分析に、『元型』の理解を役立てていたわけですね。
生まれて、死ぬということ。
人間以外にも、1つひとつの細胞から、宇宙の星に至るまで(もしかすると宇宙自体もそうなのかもしれませんが)すべての事象にみられる真理であり、“型”。
これが死と再生の元型というわけですね。
レイチェルがバラの死に直面し、そのバラを新しい苗木の底に敷き詰め、そして新しいバラの開花までを見守るということは、死と再生の過程に触れることに他なりません。
まとめ
「レイチェルのバラ」をご紹介しました。
レビューを書いていて、なんだか話が壮大になってしまいましたが、この絵本、主人公であるレイチェルが、バラの花束が枯れたことを受け入れることや、新しいバラを開花させるのは難しいことを理解することや、実際に苦労する過程とは別に、もっと深いものが描かれていて、多くの学びがある絵本だと思いました。
こどもさんの年齢を問わず、おすすめの絵本です。