太田大八:作・絵
講談社:発行
おすすめ年齢:3歳~
はじめに
この絵本の表紙のイラストは少し暗めなのですが、独特の雰囲気があり、非常に味わい深いです。
作者の太田大八さんは、本作以外にもたくさん絵本を作られているようですね。
他の作品についても画像検索してみましたが、どれもイラストというより版画のようなイラストです。
この「ともだち」、上に書いたように表紙のこどもたちが暗い色で描かれており、少し暗めの印象があります。
そして、こどもたちの服装もなんとなく戦災孤児のような雰囲気があります。
しかし、本編はけっしてそんなことはなく、明るく朗らかで、ちょっと切ない内容となっています。
「ともだち」のストーリー
この「ともだち」には劇的なストーリーがなく、主人公である男児が自分の友達を淡々と紹介していく、という展開の内容です。
起承転結でいうと、「起」の次にいきなり「結」がくる、といったらいいでしょうか。
文章は、主人公の身体が小さい男児の自己紹介から始まります。
モノローグ形式ですね。
喧嘩が強い子、計算が得意な子、なんでもできる万能型の子、みんなを明るくするひょうきんな子、勤勉な子、華がある子…
というように、男児の周囲にいるともだちが次々と紹介されていきます。
そして、こどもたちが成人して、現在どうなっているのかについても、それぞれ紹介されていきます。
海外青年協力隊として活躍している子や、勤勉さが実を結んで仕事で成功した子、得意な計算力を活かしてお店を切り盛りしている子…
主人公は小学校の先生になったようですね。
絵本は、主人公である先生が、自分のクラスのこどもたちの将来に思いを馳せるところで終わります。
こどもたちの個性
多くの絵本がそうであるように、この絵本もまた、こどもが読む、あるいはこどもに読み聞かせる内容であると同時に、読み手である私たちおとなの心情にも訴えてくるものがあります。
自分の幼少時と、絵本を読むこどもを重ね合わせて、いろいろ考えるんですよね。
この絵本では、こどもたちがそれぞれ個性豊かに描かれています。
ひとり1人に『この子にはこれ!』という得意分野(中には身体的特徴もありますが)があるんです。
現実世界でも同じですよね。
男性でいえば、小学生は足が速く運動ができる子が、中高生ではルックスの良い子が、大学生や社会人になると、頭が良く金銭的に余裕のある男性が、異性からもてたりします。
この考えには、私個人の偏見も多分に入っているでしょうが…
しかし本来は、運動ができることも、勉強ができることも、ひょうきんで面白いことも、同列で捉えられるべきでしょう。
私たちは、そのことに気づくのに長い時間を必要とします。
みんなちがって、みんないい。
金子みすず [1903-1929] の詩。
なんていう有名な詩がありますよね。
私は「みんなちがって、みんなゴミ」という詩をネットで見て、衝撃を受けた記憶がありますが…。
人にはそれぞれ、「自分にはこれがある」という自信を持てるものがあり、
子ども時代はそれを見つける旅である。
親は、子どもにそれを見つけてあげられたら、もうそれだけでいい。
個人的には、そう思っています。
まとめ
「ともだち」をご紹介しました。
この絵本も、読んだ人の年齢によって、同じ人が読んでもその時の年齢によって、
いろいろな感想を持つと思います。
きっと、子どもさんにもいろいろな感情が芽生えるのではないでしょうか。
子どもさんにも、大人の方にもおすすめの絵本です。