にしまきかやこ:えとぶん
こぐま社:発行
おすすめ年齢:1~4歳
はじめに
タイトルで画像検索するとわかるのですが、この絵本は日本以外のいくつかの国で訳されているようです。
海外でも愛される絵本だということがわかりますね。
私もこの絵本、大好きです。
絵本特有の、変に設定の説明がない感じとか、説明がない余白の部分を想像させられる感じとか、素敵な内容なのに、そこはかとなく漂う寂しい雰囲気とか、そういうの好きなんですよね。
さて、この絵本は、ウサギの女の子が主人公です。
ウサギであることや、女の子であることについては説明がないわけですが、読めばすぐにわかると思います。
なので、どちらかというと女の子向けの絵本ですかね。
「わたしのワンピース」のストーリーとおすすめポイント
物語は、ウサギの女の子のところに白い布が飛んでくるところから始まります。
白い布を見つけたウサギの女の子は、(これはいい!)ということでその布を使ってワンピースを作るわけですね。
ミシンを用いた確かな縫製技術を持っているようですので、案外ウサギは成人に近い年齢なのかもしれません。
ウサギの年齢についても記述はありませんので、老人ウサギとして読み進めてもよいと思います。
そして、出来上がったワンピースを着て、行く先々で出会うさまざまな模様がワンピースにプリントされる…という不思議な展開が待っています。
この展開が素敵なんですよね。
ワンピースにプリントされるのは、お花畑から雨、小鳥たち、虹、夕日、そして星空というように、この世のあらゆるもの、つまり森羅万象です。
この絵本を読んだこどもが、世界について学んでいけるようになっています。
プリントされる事象のチョイスも素敵で、思わず、自分がこどもの頃、初めて虹や夕日を見た時ってどんな気持ちだったかな~なんていうことを考えてしまいます。
ただ、なつかしさに涙ぐみながら読み聞かせたりすると、それを見たこどもさんが不安定になるかもしれませんので、そこは気をつけなければいけません。
まだ夕日や虹を見たことがなくて、これから初めて見て感動できるなんて、そんな経験の余地が残されているなんて、小さいこどもはうらやましいな、とちょっと嫉妬しますね。
絵本の後半、ウサギの女の子は空へと向かいます。
唐突な文章で申し訳ありませんが、そうなっているんです。
なぜそのような急展開があるのかは、実際に絵本を読んでみてください。
そして星々がプリントされたところで眠ってしまい、次のページで流れ星が描写される。
私なんかは、ここで(まさか…)と、ウサギがお星さまになって天に帰る(亡くなる)ような切ない展開とか、ウサギは実は亡くなっていて、生きているうちにできなかったことを妄想し…的なを想像してしまうわけですが、そんなことあるはずがありません。
そんな理不尽かつ厳しい展開は、この絵本を読む年齢のこどもさんには早すぎます。
まとめ
「わたしのワンピース」をご紹介しました。
この“世界”のこと。
絵本を通して、雨が降ったり、小鳥たちが空を飛んだり、夜空に星々が輝いたり…といった幼いこどもさんにとっての“不思議”に触れることができます。
女の子におすすめ、と思いましたが、もちろん男の子にもおすすめです。
日本では八百万の神々としてまつられるような、森羅万象がワンピースにプリントされていく素敵なお話です。
こういう感性を持てるっていいですよね。